
ゴジラ-1.0(マイナスワン)の感想。
シン・ゴジラ以来となる国内実写ゴジラで監督は「ALWAYS 三丁目の夕日」などで有名な山崎貴監督。
ネタバレありの感想なので続きからどうぞ。
○登場人物主演は神木隆之介。
声質上、アニメっぽさもあったけど熱演の数々に圧倒される。本物の天才。
東宝繋がりか劇中で「君の名前は?」なんて台詞もあり。
ヒロイン役で浜辺美波でまさかの「らんまん」コンビ。
シン・仮面ライダーに続いて同年にゴジラ(大作映画出演)で3大特撮制覇より凄いんじゃないだろうか。
孤児とはいえ子供がいて浜辺美波が母親役になる時代。
特撮オタク的には山田裕貴(ゴーカイブルー)も嬉しい。
吉岡秀隆や青木崇高、安藤サクラと挙げればキリがない実力派俳優陣たちの熱演が光る。
MCUウォンの吹替えの田中美央もいて良い役だった。
どの人物も良い人しかおらず、余計ないざこざがないから見易かった。
舞台は終戦直後の日本。
敷島が特攻しないで逃げてきたことを見抜いていたし、整備兵であっても負けることを受けれていたみたい。
安藤サクラ演じるお隣さんも空襲前は家族ぐるみで仲が良かったことが伺える。終戦直後だし怒りをぶつけるしかない気持ちは察する。
自分が持つ終戦前後のイメージは「はだしのゲン」「原爆」なので機雷撤去という仕事がある事も初めて知った。
終戦から1・2年で家を建てて仲間と酒を交わしながら鍋を囲むって当時基準だとかなり恵まれた生活じゃないだろうか。
○特撮シーン最初に出てきたマイナスゴジラが15mで意外と小さい。
あそこで撃っていたら本当に倒せたのかは気になる。
全編通して人類に明確な殺意を持っているけど、捕食行動をしていたのは小さかったこの時だけ。
巨大化してからは踏みつぶしたり熱線で一気に狙えるから頭からかぶりつく必要もなくなったからかな。
機雷が効く程度の防御力だけど、体内は脆いことや再生能力が凄まじい事がすぐにわかる優秀なシーン。
歴代ゴジラと比較しても熱線の威力(余波)や再生能力はトップクラスじゃないだろうか。
巨大戦艦とのシーンは迫力も見応えも十分。
続く銀座破壊シーンは圧巻。
「さようなら!」をオマージュした人もいるし、復興を始めた街を絶望に叩き落す迫力は映画館ならでは。
ゴジラとしては珍しく水中戦の多い。最初の新生丸戦や最終決戦がそうだね。
CGクオリティが高くて昼間のシーンでも違和感を感じ辛いし、難しいはずの水を使ったシーンも多い。
ゴジラ上陸シーンは銀座と山の中。
敷島が乗った戦闘機とゴジラ、山林風景の組み合わせがやけに似合っていたからもっとみていたかった。
鑑賞前から(この時代の装備でどうやってゴジラを倒すんだろう?)と考えていたのでフロンガスを使った作戦はお見事。
通常兵器が効かないから自然の力で倒すという発想は出てこなかった。
作風的に昔のゴジラシリーズみたいに超兵器出てきたら興ざめするだけだし、かなりリアリティラインに沿った作戦じゃないだろうか。
作戦同時に流れてくる音楽がもうテンション上がる。
この時代に戦艦1つを囮に使う発想が出てきたことも驚き。
それでも願望込みの作戦だったので沈める作戦は成功しても(この時点で十分凄いけど)、最初の浮上作戦は失敗。
戦艦が駆けつける熱いシーンからの引上げは時間かかりそうなのにすぐやっているし、ゴジラも水圧に適応するんじゃ?とか色々考えちゃった。
結果的にゴジラはかなり苦しんでいたし効果はあったみたい。
これが深海1500mよりもさらに深海に落としてからの再浮上なら倒せたんだろうか。
ラストは敷島の特攻。
子供はどうするんだ!?と心配したからパラシュートで脱出は安心した。
「生きろ、敷島!」の台詞も暑かった。
典子が助かったのは大衆向けハッピーエンドに考慮した感もあるけど、割と感動して涙腺にきましたはい。
○総括シン・ゴジラの方が好きではあるけど本作も負けないくらいの傑作で面白かった。
上がりまくった期待に見事応えた映画かと。
上記で何度か触れているけど終戦直後と言うのがもう見事な発想。
本来は噛み合わないはずのゴジラと人間ドラマだけど、生き延びた人々のさらなる戦いをゴジラに向ける事で成立している。
ロシアとウクライナの件もあるし戦争や核といった要素は抑えたかったはずなのに隠さず描いている。
流石に原爆投下シーンは無かったし日本でのオッペンハイマー上映の難しさは伺えた。
シン・ゴジラの比較とては
・終戦直後と現代
・政治家ではなく民間人が活躍
・行動原理が歩いていただけ?のシンゴジに比べ明確な殺意があるマイゴジ
など。
モンスターバースと比べると流石にCGは劣るものの、怪獣プロレスではなく人間ドラマを交えて日本人だからこそ響くストーリー。
絶賛ばかりなのもよくないので不満点もいくつか。
まずは人間ドラマに割く時間が長かった。
シン・ゴジラだと人間ドラマ(会議シーン)の全てが対ゴジラに向けられたもので、ドラマパートであってもゴジラをやっていたけど、本作は終戦直後なので戦争を生き延びた人々の生活や心境が中心にきている。
最終的に人間側の「生きる」ことのドラマがゴジラに向けられる事になるけど、全編通すとゴジラ感は薄いよね。ゴジラいなくても成立するので。
ドラマに時間割いた割には敷島や典子の戦争前の生活や環境が分からない。
典子の家は金持ちなのか貧乏なのかとか。
ゴジラも恐怖の象徴としては一貫していたけどゴジラの正体や具体的な目的は?
作中でも触れもしない真相に迫る者もない。倒すことに特化したストーリー。
作戦もリアリティを感じる反面、あんな巨大化ゴジラ相手に無理だろうというのは映像からも伝わって来た。
「この国は命を粗末にし過ぎてきました」「誰も死者を出さない」も凄く綺麗な台詞だけど、やっぱりゴジラ相手に死者0は出来すぎ。
ゴジラが迫ってきているのに「一度家に帰ってください」は緊迫感を感じられなかった。事実、そのせいで予想より早く到達して急遽作戦を強いられたので。
全体的には大満足のゴジラ映画。
シンゴジラやアニメ系、モンスターバースとも全く違う現代のゴジラ映画としてお見事。
続編があれば見てみたいし、何年かに1度のペースで大作ゴジラ映画を見てみたいなと感じさせてくれる作品でした。
- 2023/11/04(土) 02:30:36|
- 国内版
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自分も初日で見れて良かったです、大満足の内容で、ありがとうしかない。
ヒーロードラマ好きが転じて、ヒーロー不在ドラマ好きになりつつある中で、今作は、国家権力、軍事力すら使えない絶対絶命の状況をまさか戦後直後の時代設定で現実にありえるシチュエーションを実現。
さらに特攻隊員を主人公に置く采配の時点で素晴らしく、敷島が本当に理不尽な目に遭い続けるのが、もうやめてくれ、という気持ちでいっぱいになりました。
人は何のために生きるのか、戦うのか、そんな理由は全く無くて、ただ降り掛かってくる火の粉を払うしかなくて、呪いと責任と重圧だけがずっと彼らに伸し掛かり続ける。
そんな人間ドラマを真っ向から描いているのが、シンゴジとは全く違うアプローチであり王道なのですが、怪獣映画ではあまり到達的ない領域でもあるのかなと、逆に言えば怪獣ドラマである必要性は薄まってしまいますが、なぜ戦うのかという厚みがこれによって大幅に増していました。
>ドラマに時間割いた割には敷島や典子の戦争前の生活や環境が分からない。
これは逆に良かった点だと思います。
これから先、どんなに人類が豊かになっても、必ずしもこんなにも純粋にこの人を守りたい、と思える相手ができるのかどうか、そして、あなたに自分を守ってくれ、でも自分も自立しなきゃ、と思えるのか、思ってもらえるのか、なんてわかりませんし、AIではなかなか代用不可なわけで。
血が繋がっていない子、付き合っているわけではない、という関係性で、つまり戦争やゴジラとの戦いがずっと彼らの人生を邪魔し続けているというか、不自由さを作り出している中で、結局のところゴジラと人間の戦う理由だけあればいいと思っていて、
敷島からしたら、例えばこの世界観からゴジラが居なかったら、特攻から逃げ続けるか、特攻するか、しかなくて、進むべき道は特攻すべきだ、という価値観の世界に生きてしまっているので、結局死ぬしかないのに、生きたいけどどう生きていいかわからないと。
もうゴジラがいようが居まいが典子がいようが居まいが、本質的には敷島が救われることはなくて、もうどうしようもないですよっていう状況で、何の責務もない、ちっぽけな実戦経験のない、ただ突っ込むだけの命令を与えられて逃げてきた、本当に素質があるのかわからない一般人が戦う、という物語に、敷島や典子の背景を固めすぎると、却って情報が多すぎて没入感を得られる視聴者が減ってしまうというか。
あえて情報を引いてお出しする情報統制が効いていたと思います。
シンゴジがなぜ面白いのかをうまくハックしている気がしますね。
>特撮オタク的には山田裕貴(ゴーカイブルー)も嬉しい。
特撮の本流のような映画で、1人もライダー戦隊ウルトラあたりの出身者がいないと寂しいですよね。
オーディションで勝ち取った山田さん本当に凄いですし、あんな三枚目の役もこなしているのが凄い。
>本来は噛み合わないはずのゴジラと人間ドラマだけど、生き延びた人々のさらなる戦いをゴジラに向ける事で成立している。
これが本当に凄いです、ゴジラを通して人を描くのではなく、人と戦争を描くことで、やがてそれがゴジラとの戦いに繋がっていく。
こんな真っ直ぐなシナリオでは、普通はキツい評価もあり得たと思いますが、それを上回る違和感のないCGと、胸が苦しくなるような芝居で、追い詰められて全てを失って、でも周りに人が居てくれたっていうのに自分を責め続ける姿を見せる神木さんが評価をぐっど上げています。
反戦を描いているだけで、別に反政府的なイデオロギーになりすぎてないようギリギリの展開にしているのも、説教臭いしょぼい内容にならないようになっています。
ただ人間が生きる姿を描いているからこそ、戦争だろうとゴジラだろうと社会や政治がどうあろうと、民間人となった彼らにはそんなのどうでもいいことで。
とにかく生きるためにゴジラと刺し違える覚悟で戦う。
素朴な民間人とゴジラの命をかけた戦いが、どこか生死とは遠い世界で送っていた日常が破壊されていくシンゴジの世界観とは違う内容でした。
シンゴジのゴジラはどこか、もっとやっちまえ!と思えるようにも見えます(実際、私は好きにした、結果なので)、今作はただただもうやめてくれ、戦争が終わったのにまたかい、復興してきたのにもうやめてくれ。
そんな逃げるような、でも逃げては居られない現実=ゴジラが象徴的で、後半のややご都合な展開も、干からびて餓死しそうな人間に与えられる水のような状態で見たら、なんでも良いから助かってくれでしかなくて。
とにかく戦後を舞台にした作品が好きなので、嬉しかったです。
- URL |
- 2023/11/04(土) 03:09:50 |
- ドロー #dKZO1wvI
- [ 編集 ]
>ドローさん
戦後直後や特攻隊の主人公と設定や発想からして素晴らしく面白い映画でしたね。
シン・ゴジラとは別アプローチなのは監督も意識していたようで、実際に上手くいったと思います。
また政治家が出来てシリアス調だとシン・ゴジラにしかならないので。
>あえて情報を引いてお出しする情報統制が効いていたと思います。
ここは劇中ともリンクしていましたね。
政府が情報統制したり箝口令引いたりで。
>オーディションで勝ち取った山田さん本当に凄いですし、あんな三枚目の役もこなしているのが凄い。
カメレオン俳優と言われているだけありますよね。
ジョーのようなクール系から本作のような三枚目までこなすから素晴らしい。
>これが本当に凄いです、ゴジラを通して人を描くのではなく、人と戦争を描くことで、やがてそれがゴジラとの戦いに繋がっていく。
最初こそ(ゴジラなくても成立するよね?)と思いながら鑑賞したいのですが終盤で一気にゴジラへ向けられる構成が見事でした。
人間ドラマを求めていない層には不評かもしれませんが、自分としては満足です。
仰るようにただ人間が、民間人が生きている姿を描いているだけなんですよね。必死に生きて奮闘する姿が美しい。
- URL |
- 2023/11/04(土) 16:59:35 |
- 飛翔 #-
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